近年は子どもたちが無料で安全に身体を動かして遊べる環境が少なくなったり、ゲームや動画コンテンツなど、身体を動かさない遊びが充実していたりなど、子どもたちが自発的な遊びの中で身体機能を育むことが少なくなっています。しかも、身体の発達に凸凹や遅れがある子どもは増加傾向にあり、子どもの身体を育むことが社会課題となりつつあります。しかし、公教育として子どもたちの「体を育む」ことを担う「体育」が十分に役割を果たせているとは言えません。学校教育における体育は競技スポーツがベースとなった項目に偏っていたり、協調性など体育教育以外でも身に着けることができることに注力しすぎたりする傾向があります。基礎的な体力や身体機能が備わっていなければスポーツを楽しむことや他者と活動を共にすることも難しくなるため、先ずは「体を育む」ことを優先した体育教育であり、誰にでもやさしいインクルーシブな体育教育であってほしいと考えております。当法人では障がいがある子もない子も楽しめる子どもたちの発達を促す運動遊びの進め方を紹介しております。ご関心のある方はぜひ、ご連絡くださいませ。

子どもの発達を促す運動とスポーツは別物です

スポーツは子どもから大人まで楽しめるというのが一般的な認識です。しかし、現実は少し違います。例えば比較的ルールが優しいサッカーにもオフサイドというルールがあります。このルールは大人や競技としてサッカーをやる青少年にはゲームを成立させるためになくてはならないルールであり、大人がサッカーを楽しむには必要不可欠なルールです。しかし、幼児や通常の子どもたちにこのルールを強いるとサッカーを楽しめなくなります。このようにスポーツは大人が楽しめるように、または競技スポーツとして観客が楽しめるように様々なルールが追加、変更されています。運動による身体機能の発達が最も必要な幼少期の子どもが主体的に楽しめて、身体の使い方を自ら工夫するためにはサッカー風のボール蹴り運動遊びくらいが丁度良いのです。

代償動作が身に付く間違った運動指導とは!!

代償動作とは例えば交通事故などで右足の一部の機能が失われた場合に、それを補う為に別の機能が発達し、歩行ができるようになるなどです。

この代償動作を人為的に身につけられたせいで、協調運動障害(動作のいびつさ)が生じている場合が少なくありません。子どもの発達には発達段階というものがあり、これを無視して無理やり先のことをやらせると代償動作を身に付けてしまいます。子どもの発達は個人差が大きのが当たり前ですが、日本の文化、教育では同じことを求められます。今はほとんど目にすることがなくなりましたが、ハイハイもままならない赤ちゃんを無理やり歩行器に乗せて歩かせるなど、子どもの発達において有害なことを平気でしていた時代もありました。現代も使い方を間違えれば良くないものもたくさん見られます。例えば鉄棒の逆上がりを補助する補助板なども、身体機能が逆上がりができうる発達段階に達しており、もう少しでできそうな子の補助として使うのは良いが、そうでない子どもに無理強いすると代償動作を身に付けてしまうリスクがあります。人為的に代償動作が身に付いてしまい、協調運動に発達不全が生じることがないように運動指導を行うことが大切です。一般社団法人児童基礎体力育成協会では先天的な協調運動障害はもちろん、このような人為的な協調運動障害の改善プログラムを実施しています。

子どもに運動を指導する際は発達段階に合わせた指導を!!

人間の発達には段階があり、発達の順番が入れ替わること絶対にありません。

子どもに運動を指導する場合は、その子がその発達段階に近づいており、その子が何らかのサポートを必要としている場合にのみ、指導することを強くお勧めいたします。先の発達段階のことを無理強いされた子どもは、代償動作を身に着けてしまい、本来の合理的な身体の使い方ができなくなる恐れがあるので要注意です。

学習に取り組む前に、学習に取り組みやすい身体を作りましょう

私たちは様々な情報を感覚器から得ています。しかし、感覚器の発達不全があり、正確に見れない、上手く書けない、疲れやすいなどの症状が出ている子どもが増えているのをご存じでしょうか?そして、これらの感覚器の発達不全は、姿勢保持や身体バランスの調整に関わる前庭覚や固有受容覚の発達不全が原因です。これらを改善する運動療法は感覚統合運動療法といわれます。

静止したバランストレーニングには注意が必要です

運動機能の発達不全や発達性協調運動症の傾向がみられる子どもに、静止するバランストレーニングや体幹トレーニングは適切ではありません。なぜなら、表層筋を緊張させて、一時的に姿勢が整ったように見せるだけだからです。そして、この間違った姿勢保持を身に着けてしまうと疲れやすく集中力が持続しません。体幹機能やバランス感覚が未熟な児童にはバランスをとりながら〇〇をするというような運動が有効です。

バランスをとりながら〇〇する運動遊びが発達を促します

体幹機能やバランス感覚が未熟な児童にはバランスをとりながら〇〇をするというような運動遊びが有効です。

例えばバランスをとりながら移動する、バランスを取りながらボールを投げる、バランスを取りながら押し合いや引っ張り合いをするなどです。

そして、遊びのなかで行うことで、子どもたちが自ら工夫し、身体機能を高めていきます。

 

脳神経系の発達には12歳までの運動刺激が大切です!!

子どもが身体を動かしてダイナミックに遊ぶことで、様々な知覚神経(感覚神経)が発達します。

動画視聴やゲームは2Dの遊びで、身体を使った遊びは3Dの遊びといえます。3Dの遊びは脳機能で重要な知覚推理、空間認知、推測力の発達に関わる重要な役割があります。

 

運動すると脳内ホルモンが増える

有酸素運動など心拍数が上がる運動は脳内ホルモンを分泌し、子どもたちの脳機能と情緒の発達に大いに役立ちます。

また、近年では心拍数が上がり、脳内ホルモンを増やす運動が落ち着きがないなどの注意欠如多動症の症状を改善させる効果も実証されており、さまざまな運動の効果が期待されています。

子どもたちの自発的行動が重要です

子どものさまざまな発達には自発的行動が重要です。無理やりやらされている中ではなかなか工夫は生まれません。子どもたちが楽しんで自ら行動するなかで、少々難しいことや、不安なことも乗り越えて成長していきます。私たち大人が優先すべきことは子どもの成長に合わせて適切な環境を提供することであり、子どもの自発的な取り組みを見守っていきましょう。